変人、その男の名は
同僚に変わった男がいる。
変わった男には慣れているはずだったが、この人物は、「映画監督が考えた架空の変人」みたいな男で、どうにもおかしい。
その男の名は、
平井堅に似たハンサム、岡●県出身、30歳。職業WEBディレクター、●川区在住。
大学では日本史を専攻、高校時代は剣道をやっていた。
大学生の頃、外国の女性と大恋愛したことが人生の最大のトピックである。
そんなにおかしくなってしまう理由は見当たらないのだけど、ヘンである。
そう、この男ほど「考え方」がヘンな男を私は他に知らない。
この人物の考え方。
良い例が思い浮かばないのだが、メカニズムとしては下記のような感じだ。
「100人の村があります。テレビを持っている人は80人でした。テレビを持っているのは何%ですか?」
という問いがあったとする。
すると、Dカズは苦虫を噛み潰したような顔をしてしばらく黙った後、だいたいこんなことを言う。
「ていうか、ちょっと答えられないです」
「なんで?」
「100人の村ってのがそもそも非現実的でよく分からないっす。今時「村」とかあるんですかねえ?って思っちゃうんですよ。
それに、結局80人がテレビを持っているといってもそれって結局全員じゃないじゃないですか。」
「うん」
「じゃあ、なんか、意味無くないですか。」
「・・・」
「というか、俺はもうテレビなんか要らないと思ってんです。」
「・・・」
「どうせ全員持ってないってことは、なんか同じ番組を見てないってことですし。意味ないでしょう。
じゃあその質問自体が意味ないってことになりませんか。だからちっと、僕は答えられないっす」
要するに、訊かれてないことに執着して考えるのだけど、ハナシが拡散して分からなくなってしまうので、最後に面倒くさくなって全部切り捨てる、という。
自分の生活でも同様らしい。特に問題が無いところに執着して色々考えているのだけど、方向性がいらぬ方いらぬ方に拡散していくので、だいたい結論は大雑把なものになってくる。
何冊も本を読んで、最後によくわからなくなってしまう。引越ししたいと言って、東京をあちこち調べていたけど、結局面倒くさくなって会社から一駅の場所に落ち着いた。このときも最後に面倒になったと言っていた。
さてこの人物、ヘンな男だとは思っていたけど、「ここまでヘンだったか!」と思う出来事がちらほら。
■その1 「ブランドル博士」事件
皆さん、ザ・フライ という映画に出てくる「ブランドル博士」をご存知だろうか。
空間転送装置を発明し、実験時にハエと一緒に転送されてしまい、遺伝子レベルで融合してしまったかわいそうな科学者である(フィクションですよ)。
この人、かなり「頑固でヘンな科学者」という描かれ方をしているのですが、その「ヘン」さを示すエピソードの一つにこんなのがある。
助手がかように尋ねる。
「博士、いつも同じスーツを着ているんですね。洗濯はどうされてるんですか?」
すると博士は部屋の片隅のロッカーをがらりと開ける。
中には、まったく同じスーツが10着以上並んでいる!
「博士、同じ服ばかりたくさん持ってるなんて、ヘンですよ~」
・・・というもの。同じスーツばかり10着。かなり変人である。
ところでわが社は私服である。
一応レコード会社が母体なので。皆、思い思いの格好をしている。
Dカズはよく白い革製のスニーカーを履いていた。それは知っていた。
しかし、ある日見てみると、このあいだ履いていた同じ革製のスニーカーが、グレーになっている(気がする)。
「あれ、Dカズ、そのスニーカー白じゃなかったっけ?」
「何を言ってるんですか… 僕はこのスニーカー、8足持ってるんです。色違いで。でも白とグレーは2足ずつ持ってます。
僕は、靴はこれしか買わないんです。」
■その2 「何を食べればいいのか」事件
ある日のランチ中。何人かで「栄養バランスがいい食事とは」というようなハナシをしていた。
するとDカズがこんなことを言った。
「僕は、何を食べればいいんすかねえ?」
知らん!と答えてオワリにしたいところだが、ちょっと面白いので掘り下げる。
ようするに、Dカズは、
1:食生活は大切である(と、皆が言っている)
2:しかしバランスよく食べるのはとてもタイヘンである
3:そもそも自分は食べることがあまり好きではない
4:かんたんに自分の健康を保つための食事はないだろうか?
という質問をしてきたのである。
そもそも、この手の変わり者というのは「頑固」で、一つのことをやり続けることで心の平穏を保つ輩が多い。執着気質というヤツね。
彼もその点では例外でなく、「できればいつも同じものを食べたい」と言う。
この文化的程度の低さと言ったら無いと思うが、それはさておき、皆でアタマをひねる。
「納豆がいいんじゃないか?」
「いや、納豆は嫌いです。」
「豆腐は?」
「なんかもっと、おかずになるようなものがいいんですが」
「キムチは?」
「なんか臭いからイヤです」
「もずくは?」「イヤです」「めかぶは?」「イヤです」
・・・
「じゃあもうサプリでいいんじゃないの?」
「はあ、やっぱりそうですかねえ。中田もサプリばっかりだって言うし」
そんなわけで、現在では毎日サプリを欠かさず摂取し、メシはマックで済ませているらしい。
■その3 「マヨネーズかけるか」事件
これは結構スゴイ。
食事中の人は吹きださないようにご注意。
ランチのとき、マヨネーズに関する話題が出た。やれ目玉焼きにマヨネーズかけるとか、ごはんにマヨネーズかけるとか。
すると、Dカズが突然こんなことを言った。
「俺、チキンラーメンにマヨネーズ入れますよ」
・・・。
・・・・・・・。
ぶええっ!?チキンラーメンにマヨネーズ!?
「いや、正確に言うと、チキンラーメンにコンビニで買ってきたサラダを入れて、そこにマヨネーズかけます。」
ぎょええっ!?
はたまた、一体全体、どうしてそんなことをするの?
「チキンラーメンが食べたかったんですが、サラダを食べないと栄養が足りないと思ってサラダを入れたら、味が足りなかったんでマヨネーズ入れることにしました。」
チキンラーメンはチキンラーメン、サラダはサラダで食べればいいじゃん!!
勇者は試してみると良い。
Dカズの変人ぶりには毎日楽しませてもらっているが、彼はこんなことを言う。
「座右の銘は、『長いものに巻かれろ』です」
・・・嘘つけ!
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